【プロジェクト】インドネシア・ユース交響楽団ご支援への御礼

 

Abe_IYSO_150822_1 (P) Sanggar Seni KemasanAbe_IYSO_150822_2 (P) Sanggar Seni Kemasan

 

 

 

 

(c)Indonesian Youth Symphony Orchestra

弊社アーティスト阿部加奈子が無事、パリへ帰国しましたこと、ご報告申し上げます。

15年7月より日本に滞在し、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団にてベートーヴェン「第九」、群馬交響楽団(高校音楽教室)にてドヴォルザーク:交響曲第8番を中心としたプログラムを演奏いたしました。ご来場いただきましたお客様をはじめ、ご協力賜りました関係者の皆様へ心より御礼申し上げます。

8月にはインドネシア・ジョグジャカルタへインドネシア・ユース交響楽団の第1回演奏会を指揮するため、3週間滞在をしました。現地では、阿部の厳しい指導とともに楽団員及びスタッフのさらなる結束を目指し、早朝から深夜まで練習とミーティングを行いました。

日本をはじめ、世界各国からご支援をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。演奏会の模様は後日YouTubeにアップロードされる予定でございます。

IYSO_program_RE(演奏会で配布されたプログラムより)

改めまして、インドネシア・ユース交響楽団設立の経緯と主旨について、阿部よりメッセージが届きましたので掲載させていただきます。

インドネシアユースへの想い

「音楽を通じての国際交流と若者の育成−インドネシア・ユース交響楽団創設への歩み−」
IYSO音楽監督 阿部 加奈子

幼少の頃からクラシック音楽の勉強一筋、現在はパリを拠点に主に西ヨーロッパで指揮者として音楽活動を展開している私にとって、「音楽と社会の関わり」や「人類にとっての音楽とは」といった根源的な問題について深く考えるきっかけとなったのが、2011年の東日本大震災のときでした。

自然の脅威の前になすすべもない被災地や被災者の様子を目の当たりにし、音楽家として私の出来ることは何なのか?と考えた末、有志を募ってパリ市内にて数々のチャリティーコンサートを企画しました。それらの締めくくりとしてユネスコ・パリ本部国際大会議場で、パリ・オペラ座のメンバーからアマチュア奏者まで想いを一つにした方々からなる臨時結成されたオーケストラと合唱団による演奏会を開催しました。1400名以上の観客で埋め尽くされた会場で集められた300万円程の義援金は、その後無事に被災地まで届けられました。

この演奏会の模様が各国メディアやSNSなどで報じられ、以来私のもとに世界のあちこちから音楽家としてのボランティア活動を要請するメッセージが届くようになりました。

そのうちの1つ、インドネシアのジョクジャカルタ・セニ国立芸術大学のブラマンチョ教授からのメッセージに心動かされました。「大学と名のつく機関はあるものの専門的知識や技術を教えられる先生は皆無で、熱心に自学に励む学生達は路頭に迷ってしまっています。そんな私の学校の学生オーケストラを一度客演指揮しに来て下さいませんか?」との申し出を受け、詳細もよくわからないままとりあえず航空券を購入し、ジョクジャカルタへと赴きました。

チューニングの仕方すらわからず、4小節以上先へは進めないオーケストラ。

最初のリハーサルでは私も少なからぬカルチャーショックを受けましたが、1週間にわたる猛特訓の末に行われた演奏会では、1時間半のオーケストラプログラムを見事に弾ききるまでの驚異的な上達を遂げました。スポンジのようにどん欲に教えを吸収して、目を輝かせながら音楽の喜びを仲間達と分かち合う、そんなインドネシアの若者達の姿に私はすっかり惚れ込んでしまいました。

さらに、私の滞在するホテルまで押し掛けて来て、「インドネシアの音楽教育を確立して、この国の音楽環境を変えて行きたい。自分達の世代でそれが実現できなくとも、次世代への橋渡しをしたい。そのために力を貸してほしい。」と訴える彼らの熱意に打たれました。その後、私がパリに戻った後も、インターネットを通じての密な交流を続けてきました。

翌年、再びセニ国立芸術大学オーケストラへ客演をした際、彼らとよく話し合い意思確認をした結果、インドネシア建国史上初の試みとして、教育を目的としたユースオーケストラを創設することになりました。

楽団名を「インドネシア・ユース交響楽団」と名付け、2014年6月に発足した新設オーケストラの音楽監督に就任した私とともに、若者達から成るインドネシア人スタッフ陣に音楽面、運営面の両面においてゼロから指揮・指導する日々が始まりました。音楽業界での経験が豊富な私のマネージャーである船橋良太さんも協力してくれました。

試行錯誤しながらの1年間の準備期間の後、2015年8月中旬に「第一回サマーミュージックキャンプ&コンサート」と題した合宿を行い、合宿最終日には1週間にわたる猛練習の成果を演奏会で公式披露、オーケストラ活動のスタートを切りました。

「サマーキャンプ」開催に際し、後援を快諾して下さった在インドネシア日本大使館をはじめ、楽器を寄贈して下さったチューリッヒ歌劇場、ヴァンドレン社、その他多くの個人・団体の皆様より様々な形でのサポートを頂いたことは、我々にとって今後への大いなる励みとなりました。

また、1週間寝食を共にしながらインドネシアの若者達と過ごす中、彼らがオーケストラ活動を通じて日一日と人間的に成長してゆくのがありありと感じられ、演奏会後のお別れパーティーでは感極まって泣き出す子が続出。私もそれを見て思わずもらい泣きしてしまいました。

オーケストラでの様々な経験を通じて、彼らには社会で活躍するために必要な多くの事を学び、輝かしい未来を築いて幸せになってもらいたいと願っております。希有なご縁で繋がったインドネシア、私はこの縁を大切にし、日本人であり音楽家である私が出来ることを通じ、日本とインドネシアの友好がさらに深まり相互理解が一層深まることを期待しています。

ようやく産声をあげたばかりのインドネシア・ユース交響楽団ですが、特に運営資金面で困っております。私や現地スタッフ、加えてマネージャーも足代も含めボランティアで参加している状況です。せめて自分の生活を犠牲にしてまで頑張ろうとしている現地スタッフの生活の安定、参加メンバー達の渡航費と滞在費について、みなさんに資金援助をお願いさせていただきたくこの場に立たせていただいております。もちろんサポートをしてくださった法人様におかれましては、現地での広報も精一杯させていただきます。

これからの課題を考えると気が遠くなる思いですが、若者達の熱意に答え、彼らが少しでも明るい未来を切り拓くお手伝いが出来たらと願っております。

今後とも皆様のご支援、ご指導賜りますよう宜しく御願い申し上げます。

2015年10月10日、パリにて。
阿部 加奈子